日本で乳幼児に行われているBCGワクチン接種は、3×3=9、9本の針がついたスタンプのようなものを2回、上腕の外側に押して行われます。
新型コロナウィルスの国や地域による感染率の差などから、BCG接種に予防効果がある可能性などが指摘されたりしたことで、日本では当たり前となっているこの予防接種が、予防接種に熱心な欧米諸国の多くの国では実施されていないことを意外に思われた方もいらっしゃることと思います。
BCGは結核を予防するためのワクチンですが、結核を予防する効果はそれほど高くないと考えられています。また、多くの先進諸国ではそれほど流行してはいないので、乳児の予防接種を徹底して義務化しているようなEU諸国や北米においても実施されなくなりました。
3人の子どもたちの乳幼児期、私たち家族は海外で生活していましたが、プールやビーチでアジア系の子どもを見かけたとき、腕にBCGの瘢痕があれば日本人だと特定できるほど、この日本式のBCG接種は世界のなかでは特殊なものです。
海外生活を送っている間も、帰国した際に、子どもたちに日本で推奨されているBCG接種を受けさせるために小児科を訪れました。その際、腕に跡が残ることを避けたいと考えて、医師に「腕以外の、目立たない場所に接種していただけませんか?」とお願いしたのですが、上腕以外の場所での効果は確認されていない、腕にしか接種できないし、跡はほとんど残らない、と言われ、仕方なく3人とも腕に接種していただきました。
その後、3人ともその場所がかなりひどく化膿しました。接種後、化膿すれば予防効果があると言われましたが、その後のツベルクリン検査で3人とも痕跡もない陰性で、再度BCG接種を受けることになり、成人した今、3人とも36個もの瘢痕が腕に残ってしまいました。
日本人以外の人々は、この予防接種を知りませんので、子どもたちの腕に残るいかにも人工的な瘢痕を見て「それは何の跡なの?」とママ友たちに何度も尋ねられました。
BCG接種の瘢痕だけではなく、海外で長く生活していると、日本人の腕には、過去の種痘の予防接種などの瘢痕が目立ち、気になります。
私はカナダで生まれ、種痘接種は膝に行われたので、同年齢の日本人のように腕に跡はありません。ブラジルで生まれた従妹は踵に種痘接種をしているので、やはり腕に跡はありません。
今年誕生した孫たちは、足の裏にBCG接種を受けました。
日本では相変わらず腕にしか接種できないことになっているらしく、腕に瘢痕が残る赤ちゃんが次々誕生し続けていますが、わざわざ目立つ場所にせずにすむ方法を考えてもよいのではないか、と思います。