米国で、頭蓋骨と頸椎を固定する手術を受けた後、主治医より、安全のために今後メディカル・ブレースレット(medical bracelet: 医療用ブレスレット)を身に着けるようにと勧められた。
写真のようなものであるが、単なるアクセサリーではなく、重要な医療情報を含むものであることを示す、医療のシンボルである蛇のマークが必ず見える部分に着けられている。ブレスレット以外に、ペンダントとして首から下げるものもあるし、スポーツをする際に身に着けていても安全で頑丈なもの、お洒落なもの、子ども向けの愛いデザインのものなど、欧米のサイトでは性別や年齢を問わず、多くの人々に合わせて様々な素材のものが販売されている。
私のメディカル・ブレスレットは、プレートの裏面に、氏名と、「頭蓋頸椎固定 気道確保困難 気管挿管にはファイバー・スコープまたはグライド・スコープ使用のこと」(Craniocervical Fusion, Difficult airway. Intubation by fiber optic or by glide scope.)と彫られている。この文言は、主治医が指示したもので、患者は症状に応じて必要な文言を決めて発注する。以前、心肺蘇生術、いわゆる緊急時における人工呼吸のやり方の講習を受けたことがあるが、その際、気道を確保するために、首を後ろに反らすように指導を受けたが、万一私が外出先で倒れて意識を失ったような場合、首を後ろに反らすことは命に関わる危険な動作となる。欧米諸国では、メディカル・ブレスレットの重要性について、救急隊員ばかりでなく、一般の人々にも広く認識されているので、誰かが倒れたら、まず首や腕をチェックして注意してくれるので、このブレスレットを身に着けていれば、いきなり首を後ろに反らされるようなことにはならないであろう。
いつ交通事故に遭ったり、急に体調が悪くなるかわからない。そのようなとき、「糖尿病です」「腎臓病です」「てんかん発作があります」などの情報があれば、支援する人々の助けにもなる。プレートの文言は、病名ではなく、緊急連絡先の電話番号であったり、その方の医療情報にアクセスできるURLアドレスであったり、また、ブレスレット自体にUSBメモリーがついていて、重要な医療情報が保存されている、というタイプのものまである。
日本の大学附属病院に入院した際に、医師を含めて多くの方々に珍しがられたこの「メディカル・ブレースレット」日本では普及しないのだろうか。